サステナビリティ倶楽部レポート

第4号「現場NGOの活動と企業の役割」

2011年05月10日

●ひとまとめの金銭的救援から顔の見える個別支援に

震災への救援として、とりあえず「わが社も○○円拠出」とある程度の金額を寄付する。その拠出先の多くが日赤への義捐金やジャパンプラットフォームへの支援金なのだが、こうした大口でまとめた窓口では、自分たちのお金が一体どう使われたのかよくわからない。受け取った方も、お金はありがたいけれどいろいろな会社が出していて、誰がどういう思いなのかは伝わらない。

そこで、地域や専門性を活かして活動する個別のNGO/NPOと個別企業が「顔の見える連携」をしていくことが望まれる。お互い相手がわかればモティベーションがあがるし、作業も効率的だ。

そんな思いから、震災の復興にあたって企業とNGO/NPOのコラボレーションを進めるきっかけづくりとするセミナーを4月19日に開催した。今回はパブリックリソースセンター(CPRD)と弊社の発案で企画したが、1回限りのイベントではなく、NGOや企業、そしてCSRやサステナビリティを支援する立場の中間支援組織が多くこの場に集い、意見を出し合ってアクションにつなげていければと思っている。

ここでは、

 1.企業が被災地支援、あるいは中長期的な復興に向けて何ができるか、

 2.何を社会貢献として、あるいは本業において引き受けることができるのか、

 3.企業とNGOはどのようなパートナーシップが組めるのか。

 4.今まさに目指すべきサステナブルな社会づくりとは何か。

といったことをテーマにしていく。講演者の話を聞くばかりでなく、参加型の出会いの場や各社の活動を報告しあって刺激し合える場になればいいと思う。

●被災者の経済的自立につながる活動を

セミナーでは、最初に現場NGOの4団体(アムダ[AMDA]、アレルギー支援ネットワーク、ジェン[JEN]、日本財団)から活動の実状を報告してもらった。

アムダは緊急時の医療救援活動を行うNGOだ。緊急の支援に重点を置いているので、今回の震災についても4月20日で主要な活動は終了したという。そして、「今後は東南海大地震が必ず起きるから、今はもうそれを想定して備えている。」ということで、既に次の対策に頭を切り替えている。

代表の菅波さんの話す言葉には、自分がこの活動を率先して進めている強い意志が感じられる。ボランティアとして現地で関わるにしても、いつまでも頼られているのはよくない。被災者が自分たちでやっていけるように、そして喜んでもらえる活動は何か、いつもそう問いかけながらやるべきだという。一方的なスポンサーシップではなく、パートナーシップであることだ。

金銭的な支援は、仲介を通した出所がわからないお金を渡すのではなく、「私は○○のためにこのお金を使ってもらいたい」と顔がわかる出し方をすることに意味がある。これは海外での経験で実感したことだという。そうした思いがあるので、ジャパンプラットフォームには参加しておらず、アムダを直接支援してくれる人たちの誠意を大事にしているという。

また、現地の人たちを被災者とひとくくりにすることも問題だという。被害者であっても行動できるのだ。健康な人たちには、現地で雇用できるプログラムをつくることが大事だという。例えば、救援物資を運ぶ車の運転者や看護師など、仕事としての救援業務も多い。被災者の方たちに賃金を払って関わってもらうことで、合法的にお金を落とすことができる。現地の方たちも生活していくためのお金が必要なのだ。

この点JENは支援にあたり、地元の住民6人を有償で救援チームとして組織した。6人にそれぞれの役割も担ってもらい、自分の住んでいる街の復興に自らが取り組む。元気な人たちは昼間手が空いているのだし、外部のボランティアなどより地域に詳しい本人たちがやれば継続性もできる。助けるばかりでなくて、いかに地域が主体となった自立支援につなげるかだ。

●企業の復興活動は、事業に絡めて

企業が関わる支援活動も、復興のステージになれば事業のなかで長期的にどう展開するかに重点が置かれる。今回のセミナーでは、日本IBMとNECの取り組みを伺った。

IBMでは、事業戦略の柱を“Smarter Planet”と名付け、ICTを活用して社会インフラや事業活動を効率的でエコに展開する構想に主軸を置いている。街全体でのエネルギーの効率的な利用を可能にし、同時に災害に強い街づくりをつくろうというコンセプトだ。今回の震災で、防災機能をどう付加するかが一層重要になった。

NECの発表で関心が大きかったのは、社会貢献プログラムを寄付やボランティアに留まらず地域での起業支援に力点を置いているところだ。被災地の復興には、BOPビジネスのモデルと共通するところがあり、生活者の視点で問題を解決していくことを小さな事業として展開していくことが有効だ、と話していた。それには大企業が主導するのではなく、地域のNGO/NPOに生活のニーズを伺いながら、彼らと連携していくことがポイントだという。NECではこれまで25の社会起業プロジェクトをやっているが、その内容を復興支援のテーマに移行していくという。

●企業とステークホルダーの連携で

戦略的CSRとして復興活動を考えると、ステークホルダーとの連携がキーワードになってくる。そしてそれには2つのアプローチがある。 1.地元の復興対策に協力し、被災地の団体の現場活動を支援する、 2.自社の今後の事業展開に生活者視点やサステナビリティの観点を組み入れるために、  専門的な見解やローカルニーズの意見をきく

1.は緊急支援ばかりでなく、今後長期的な経済の復興には必須の課題だ。工場がある地域など、自社事業と関わりがある地域がやりやすい。2.はこれからのステークホルダー・エンゲージメントのあり方といえる。企業だけで経済を引っ張っていくことは難しい。かといって政府や自治体も復興のマスタープランは練るが、具体的なビジネスは民間で推進していくものだ。大規模な公共事業で解決できるのもではなく、個々のニーズをNGO/NPOとの連携でくみ取っていける企業がこれから生き残っていけるだろう。

今回のセミナーは全般的なテーマで開催してみたが、今後具体的な復興アクションに移っていけるようにこの集まりを続けていきたいと考えている。そして、復興に向けて企業とNGO/NPOがエンゲージメント、コラボレーションできるオープンな場にするために、弊社だけでなく企業のサステナビリティ推進を支援するアドバイザリー会社などにも広く参加してもらい、サステナブルな企業活動を広げていきたい。

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【研究会開催のご案内】創コンサルティングでは、企業のCSR担当者が集う「サステナビリティ経営ネットワーク」を本年度も引き続き開催します。ネットワークメンバー及びゲスト・スピーカーとの活発な知見交流を通じてCSRマネジメントのさらなる展開をめざしていきます。

 ・プログラム(初回: 2011年6月16日)

   第1回 最近のサステナビリティ動向のレビュー   
   第2回 グループ内での展開・推進
   第3回 ISO26000の活用
   第4回 アジアでのCSR展開
   第5回 CSRブランディング
   第6回 戦略的コミュニティ活動
   第7回 投資家とのダイアログ
 ・参加費用: 1社あたり21万円(2名まで参加可、税込み)
 ・詳細とお申し込み受付は下記サイトまで
  サステナビリティ経営ネットワーク 開催のご案内