サステナビリティ倶楽部レポート

第23号「奇異な国とみられているニッポン」

2013年01月22日

●景気はよくなってほしいけれど・・・

「今年は景気がよくなりますかね」「よくなってほしいですね」新年最初の顔合わせをしながら、こんな会話をする。

景気はよくなった方がいい(=経済は成長した方がいい)。この当然の方向をこれまであまり疑わずにこられたが、それでいいのか、と考え始め思い詰めるものだから、あいさつの会話も何だかしっくりこなくなってしまう。

成長しなければ、雇用も生まれない。失業して収入がなくなれば、生活が苦しくなる。生活が苦しくなれば・・・、と悪循環はわかりきっているが、成長の代償は自然資源の枯渇であり、生活基盤として人間に必要な環境の破壊。それも遠い先でなく足元でそれが起こっていながら、今の政策は目の前の景気回復それも日本という一国の範囲でしか見ていない。

●おかしなことが通っていく日本

最近の海外メディアでは、”Japan”の記事をよく目にするようになっている。3.11震災直後は日本のことをよく取り上げていたが、その前も後もほとんど関心がもたれていなかったので、最初は話題になることはいいことだ、と思っていたのだが・・。
「自己中心で破滅的なニッポン。こんな後先考えないめちゃくちゃな政策が、何の異論もなく何故こんな大胆にできるのか。」日本への関心は、ポジティブな見られ方ではなくて、あの国一体どうなっているのだという見方から始まり、今ではほとんど奇異な目で見られている。

その始まりは、安倍氏が自民党の総裁に再任した時からだ。病気で首相を辞任した人間が、なぜ平然とトップに戻ってこられるのか。そんなカムバックに対して疑問をもつ声が俄然少ない日本の反応に、最初の“?”。そして、この自民党に大きな賛成票を投じて、安倍氏が圧勝してしまう日本国民の姿勢に疑問“???”。日本の中では、大きなことをいっていた民主党が分裂し期待はずれで何もできなかった裏返しなのだが、それにしてもこんなに簡単に旧体制に戻ることを許してしてしまうのか、という意外さが海外の驚きなのだ。

政治の失敗のツケを市民に押し付けるのか、とデモや暴動で不満をあらわすヨーロッパの国々。これまで押さえつけられてきた一般人が、経済力をつけるとともに社会意識にも目覚め、様々な意見を発して市民のエネルギーが噴出している新興国。日本だけ何の動きもなく、ただただ困った状況のなかで誰かに何かしてもらうことを待っている。これまでのリーダーが頼りにならないとわかっても、自分たちで何かしようという動きがみえないから、外国人からは顔が見えない奇怪なニッポンなのだ。世界の激動が増殖しているのに、なぜ日本だけ変わらなくていられるのだろうか、と。

これまで対米従属で、アメリカのいう通りにしてればその恩恵で経済が伸び国も守られていた体制のなかで、日本人は考えなくなってしまった。あるいは、思考の中枢までがアメリカ依存軸なしに考えられなくなってしまった。アメリカという国がもう大国でもなく凋落著しい国なのに、それでも彼らといれば大丈夫としがみついている日本が哀れに映っている。アメリカ自体もアジア戦略を大きく変え日本なぞ重要な国でもなくなっており、日本からアメリカへの一方的なアプローチは滑稽にすら見えている。

多くの方々は、民主党の失敗は党内の統率力になさにあったと批評しているだろうが、私はもっと大きな問題は、対米従属を続けさせようと日本をコントロールするアメリカ側の勢力だと思っている。日本独自で動こうとした人たちやその政策は、こうした力でことごとく潰されてしまった。何がなんでも小沢一郎を悪者にしようという圧力、日本をあおって中国と敵対させてしまえという思想の操作・・・。

そして、主要メディアが功名に私たちの考えをその方向にもっていこうとする。インターネットの広がりで世界がこれだけ自由な発言をしているのに、日本では声高に意を唱えた人は何かと制裁を受けてしまう。日本語のものしか読まないので、世界の動きに関心が向かないというのもあるだろう。ダイナミックに動いている世界情勢をリアルタイムに感じながら日本の進む方向を考えたり、物質で埋め尽くされた人間社会のこの先を見据えながら人生観や社会観を経済政策のなかに込めて話す人は少ない。

●金融緩和策で豊かになるか

アベノミクスはまた、格好の批判ターゲットになっている。

  • 景気刺激策といって大胆な金融緩和をとっているが、財政赤字がGDPの200%を超える国がそんなことを平気でやって大丈夫なのか?
  • これで国内産業を活性化して雇用を生むというが、赤字が膨らむだけでそんなダイナミズムが日本国内にあるのか?
  • これで円安を促し日本からの輸出を増やすというが、政治主導の為替操作は市場への介入ではないか。
  • 中国には強硬な対立姿勢を貫いているが、地政学リスクを解さないナショナリズムでしかない。

こんな調子の報道が盛りだくさんで、「未来に背を向け、世界からの孤立に突き進む危険なリーダー」と評されている。国内では刺激策に異論を唱える論争もされず、自分の問題なのに何とも感じない思考停止のニッポン人なのだ。震災の後に「日本は我慢強く、助け合って絆を大事にするいい国民」と世界から賞賛の声が送られたあの評判は、もう過去のものになってしまった。

●成長にこだわらない経済策・・・?

課題先進国の日本からこの先の納得できる政策を出せれば、世界はまた日本に一目置いただろうが・・・。究極は「経済が成長しなくても、世界の皆が幸せに暮らせる社会」。これはもうお金を稼がなくても生きていけます、という原始生活に近い社会なのだが、私もビジネス界にいる以上、成長しなくていいとはいえない。ほかにいい経済政策は何かを考えてみてもどれも究極への道でなく、正直あまり明確な答えが出せない。世界経済の急拡大の現実を目の前にして、「皆さん、持続可能な成長ベースで、もっとゆっくりやりましょう」といってもすぐ簡単に賛同を得られるわけでもないこともわかっている。

それでも先を見れば、そちらに方向転換させざるを得ない。ともかく理解を得てもらい取り入れてもらおうと、言い続けていくことだと思っている。本年もどうぞよろしくお願いします。

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CSRを企業戦略として提唱している、海野みづえ(創コンサルティング代表)が発行するメールマガジンです。地球と社会が大きく変動しているなかで、経済や経営をどう持続可能にしていくかを考えレポートしていきます。購読は無料です。配信は月1回を予定しています。