創ゾウ人~世界を視る、地球で感じる~

専門職への先入観

2010年03月19日

質問をひとつ。
 ここはアメリカ。父と子が車にはねられて、別々に救急車で病院に運ばれた。
 重傷の子供が運びこまれた病院で、担当だった外科医が施術しようとその子供を見るなりいった。
 「この子は私の息子なので、私は手術できない。」(肉親であると別の医師が担当する。)
 さて、この医師と子供の関係は?

解答はいくつかあります。この質問に、向井万起男さんは「簡単だよ」といってこう答えたそうです。
 はねられた父親は新しい父親で、外科医は離婚前の血のつながった父親だった。
そう、もっともですね。しかし万起男さん、次の解答を聞いて自分の答えを恥じたそうです。
 「外科医はその子の母親だった。」

「外科医」と聞いた瞬間、そういう専門職は「オトコの仕事」と擦りこまれているんですね。万起男さんは宇宙飛行士で心臓外科医の向井千秋さんの夫で、千秋さんへの理解の深さでも有名な方です。そんなオレが、外科医が女性であることを考えもしなかった・・・というわけ。いや、実は私も同じような思考だったのデス。

これはダイバーシティ大賞のシンポジウムで基調講演をされたパク・スックチャさんのお話のひとつです。パクさんは韓国籍で、アジアやアメリカでの仕事や家庭の経験をもとに語るダイバーシティの必要性がとても実感湧くものでした。

「日本」の「オトコ」を中心とした単一集団でこれからの日本を何とかしていこう、なんて考えたってろくに突破口が見えない。減少する日本人口のなかで、消費拡大に大いに貢献してくれるのは、中国や韓国、シンガポールの観光客です。国内だから・・なんて日本人同士だけに閉じこもっていては、「ニッポン素晴らしい!」とわざわざ来てくれるお客さまを取り込めないですね。国内でもダイバーシティを進めない会社は、ショボくなりますよ。

これまでの慣習や成功体験は、かえって余分な先入観となって邪魔になることが多いのです。その延長でなく、「それは偏見じゃないか?」と疑ってかかるくらいに転換していかないと。そう考えれば、日本にはいいものがたくさんあるのです。

海野みづえ プロフィール

2020年4月より山梨県北杜市に在住。
それまでは企業向けのサステナビリティ経営アドバイザリーを展開。23年間経済と社会の接点の分野をビジネスの立場から取り組んできた。
この間自身の価値観を根本から転換していく意識が湧き上がり、生き方を変革(Transform)することが、サステナビリティの基本と感じる。

現在は自然と接する中で人間らしいライフスタイルを実践し、社会全体をホリスティックにとらえる眼をつちかっている。

創コンサルティング
https://www.sotech.co.jp/

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