サステナビリティ倶楽部レポート

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  サステナビリティ倶楽部レポート 第12号   2012年2月1日
    「操業のための許可(License to operate)」

    発行:(株)創コンサルティング
       海野 みづえ ( info@sotech.co.jp )

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手に入れたい・・・という欲求があることが、何か行動を起こす原動力になるものです。
せっかく手に入れたものだから、大事に手元に持っておきたい、それをうまく使いたい
とも思います。
しかし最近思うのは、「手放すことの大事さ」です。
続き> http://www.sotech.co.jp/talk/vol91.html

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●責任を強いられる自主性
CSRは法令順守を超えた責任であり、自主的自発的な取り組みである。今さらいうまでも
ないことなのだが、この「自主的」の解釈レベルに温度差がある。

日本語でとらえると、自主的には「やれと言われたことでなくても企業側が進んで
やります」という付加的ないい意味が込まれている。確かに日本のなかで日本人同士が
やっていく時には、この解釈でいいだろう。

問題になってくるのは、ガバナンスが働いていない国や開発が遅れている地域、また
社会不安が広がる環境下での操業だ。日本の常識が通用しない場合、何をどこまで
やったらいいか、ローカルな状況下で自社で判断しなければいけない。

まずは法規制に沿うことを考える。法律はしっかりある国でも、運用がまったくなされて
おらず、事実上守られていないケースが多い。実際は、現地の慣行を尊重しそのやり方に
あわせるように柔軟に運用する、ということだろう。

厄介なのは、法律には書かれていないが、ビジネスをやっていくうえで必要最低限やらなけ
ればならない場合だ。現地の習慣への配慮や生活のリズムにあわせるといったことは当然
配慮することで、長年日本企業がアジアでやってきたように常識的な発想で対処できれば
問題はない。

今日本企業がCSRとして注意を払わなければならないことは、これまで以上に周囲の環境や
住民の生活へのダメージを真剣に考えなければならなくなっている事態だ。工場を建てる
ことは、地域の雇用を創出するので歓迎されるはずだ、という企業にとっていいこと
ばかりではなくなっている。法律を守っていても、操業することでマイネスの影響がある
なら、それは企業が責任もつべきだ、とみられている。

顕著な例は、鉱物資源やエネルギーあるいは農産物といった自然由来原料の調達に関わる
ケースだ。山奥で管理の行き届きにくい鉱山開発のサイトなどでは、自然破壊や地域社会
のステークホルダーへの対応が放置されがちだ。法律など整備していない国は多いうえ、
あっても取り締まるまで手が回らない。そこで、NGOや地元住民が、企業がそこでビジネス
するならばまずステークホルダーへの対応を行うべきだ、と監視の目を光らせる。

●ステークホルダーに配慮してはじめてビジネスができる
このように、法律で規制されていないがビジネスとして当然やるべきことは、
「操業のための許可(License to operate)」といわれている。そこでビジネスをしたい
なら、まずステークホルダーへの配慮を十分にして、そのうえでなら儲けてもいいよ、
というものだ。

この業種で始まった言葉が、あらゆるところで使われるようになっている。これを
やらなければ事業を始める入口にすら立てないのだが、何をどこまでやったらいいのか、
それは会社がそれぞれの状況に応じて「自主的に」考えて判断せよという。これはもう
強制されている話で、だから「責任」なのだ。

鉱山など周囲への環境負荷の大きいサイトでは、開発許可の条件に「周囲の住民の合意を
得ること」ということが盛り込まれている。「合意を得た」という証しを誰かに発行して
もらえるわけではないので、ステークホルダーと対話をし、そのエンゲージメントの
プロセスを外部にわかるように説明できることだ。

ここをうまくやっておかなくてあとで問題が起こることが、大きなダメージになる。
例えば、コカコーラのインドでのケースがある。成長市場の拠点としてインド地域で
飲料水工場をつくり、そこで原料の水は地下水をくみ上げた。大量の地下水をくみ上げた
ため周囲の水量が大幅に減少し、住民の生活水が不足するという大きな打撃を受けたのだ。
住民は工場の前でデモを繰り広げ、これをイギリスのNGOが大きく報じたことで同社は
ヤリ玉にあがった。

公共の水資源を地域で分け合って使うことが、地域のサステナビリティの根本だ。
その暗黙のルールを企業が無視して独占した格好だ。地方の政府がコントロールできる
ような規制など今までないので、問題が明らかでも違反として取り締まれない。

大企業であれば事前に周囲への影響を把握して、対処しておくべきことだ。操業を始めて
から大きな問題になるより、開発の段階で許可のひとつとして「自主的に」取り組む
ことが操業の許可だ。

このケースはまた人権問題を理解するうえでもいい事例である。
日本では人権の範囲を従業員の差別問題など、社内の雇用問題のみに限って考えがちだが、
今グローバルでいわれる人権とは、「様々なステークホルダーが生きていく権利」である。
コカコーラの地下水問題は、環境問題でなく人権問題の典型的なケースとしてよく扱われる。

●グローバルビジネスでのリスク対応
操業の許可はこのようなローカルでの事業の話だけでなく、グローバルに信頼される企業
には必要なものだ。

武田薬品は、アジアやアフリカの健康問題の解決のために、NGOを通じた支援や基金の
創設などの支援活動に力を入れている。世界の製薬業界では、貧困地域の健康問題を
支援することは社会貢献ではなく、グローバルでビジネスをするうえでの最低限の行動だ
ということが、国際会議の場に出てみて痛いほどわかったそうだ。だからこの活動は、
グローバル企業として認めてもらうための、いわば「チケット」なのだという。プレイ
グラウンドの入口にドナーボックスが置いてあり、そこでしかるべき支払いをしてから
入れよ、というわけだ。

さらに、やっていることを知ってもらわなければ会社のプレゼンスも理解されないので、
様々な公の場で積極的に発信することが大事だ。社会貢献は陰徳、という日本の謙遜姿勢
とは全く違う常識なのだ。

最後にいつも私がいうことを、またここで。
CSRは多様なステークホルダーと向き合うことだ。事業がグローバル化しているのにCSRだけ
内向きで、日本人同士のコミュニケーションばかり考えることが問題だ。今後の海外事業
展開のリスク対応としても、グローバルでのCSR活動をもっと意識しなければいけない。

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