CSR倶楽部レポート
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CSR倶楽部レポート 第75号 2010年5月27日
「中国工場労働者の不安」
発行:(株)創コンサルティング
海野 みづえ ( info@sotech.co.jp )
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「パラサイト」と聞くと、社会人になっても親と同居して生活費を安くあげてすます若者を
想像します。しかしここでのパラサイトは、現役時代はバリバリのビジネスマンで大企業の
社長や役員まで上りつめた極めて優秀な元企業戦士。
続き>>http://www.sotech.co.jp/talk/vol56.html
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● 若者の工員による自殺が続出
台湾のエレクトロニクス会社であるフォクスコンは、アップルのiPodやiPhone、HPのパソコン
など主要な電子機器のOEMメーカーだ。この会社の深セン工場で自殺が続出しており、問題に
なっている。今年になってからポツポツと起こり、先日10人目の飛び降り自殺者が出た。
フォクスコンはコネクターの製造から始まり、その後大手ブランド品のOEM生産に参入。
中国など生産地域の現地メーカーを買収して急速に成長し、今では総勢80万人(!)
の従業員規模まで拡大している。うち30万人が働く工場が深センにある。従業員のほとんど
は、内陸の農村部から出稼ぎに来ている20歳前後の工員だ。
深センの工場地帯の住民年齢は極端に若い。同社だけでなく、皆工場が提供する寮に住んで
いる。これだけの規模の工場なので、ひとつの町になるくらいの大きさだ。社内の食堂で
3食提供されるので、敷地から外に出ないことも多いという。
私も2年ほど前にこの地域を訪れたことがあるが、朝の出社時間に工場地帯内に足を踏み
入れると、付近はこうした若者が怒涛のように押し寄せている。人数の多さだけでなく、
ともかくこの年齢の人間しかいないのだから、異様な風景だった。昨年7月にはこの
トピックでブログを書いた。
http://www.sotech.co.jp/talk/vol38.html
「チャイナ・プライス」
●改善されない労務の実態
中国の労働環境については以前から問題になっているので、同社としても住環境や衛生面では
かなり改善がされている。工場施設や寮の部屋などは最近新築した社屋のようで、かなり
きれいだ。さらに敷地内にはスポーツ施設や図書館、インターネットカフェなどの設備も
整えている。
http://www.ft.com/indepth/foxconn
しかし、問題は労働の中身にある。長時間勤務や残業代の未払いなどは、労働監査が入って
最近指摘されていたことだ。同社内でも改善に全く無頓着なはずはないが、それよりも次々
発注されるオーダーをこなし様々なアドミ業務に忙殺される管理者は、製造現場まで目が
行き届かないといった状況だったようだ。
現場の実態は通常表からはなかなかわからないが、今回の件で様々な声が噴出している。
「会社は工員を人間扱いせず、効率しか考えない。」
「どれだけ長期間働いてもずっと同じ作業の繰り返し。単純労働のうえプレッシャーが
大きい。」
1日12時間シフトの勤務形態は通常で、過酷な条件での労働環境はたいして改善されて
いないらしい。工員の精神的なストレスはたまる一方だ。事件が明るみに出てから会社内で
ホットラインを設けたところ、自殺を考えているという相談がよく寄せられるそうだ。
●時代の変化にあわない労働スタイル
一連の事件のウラにどんな実状があるのか。
経済発展の恩恵を受けて深センの街も著しく近代化しているのに対し、隔絶された工場内は
その環境に追いついていけない。最低賃金は引き上げられるものの、工員の賃金では
外界の物価上昇にとどかないので、「街に行くとお金がかかるから、敷地を出ることは
少ない」と女子工員。
またこのような事件が起こる背景は、中国の経済成長政策による働く人たちの意識の変化が
大きい。現在の若い工員たちは、経済改革後に育った世代だ。親の世代が貧しい農村から
出てきて職を得ることに満足できた頃とは異なり、地道に仕事するよりも楽に稼げるいい
仕事を求める。稼げる職の機会は格段に増えているし、プレッシャーに弱い若者ともいえる。
工員を工場労働に縛りつけておくことはできない。余暇の時間があっても、疲れて気力が
なければ精神的に空虚な状態になりやすい。さらに寮の部屋は8人の相部屋で、自分の
スペースはベッドとロッカーのみだ。プライバシーとは言い難く、気分を発散することも
ままならない。悲観的になれば安易に自殺に走ってしまうだろう。
中国ではこのような悲観的行動が感染しやすく、衝動的な自殺ブームが心配されている。
何やら日本と同じような現象を辿るところがあり、経済発展のひずみはこうしたところに
あらわれる。
●グローバル企業としての責任
アップルやHPは、フォクスコン事件の影響で不買運動も始まっているという。サプライヤー
の労働環境を配慮したCSR調達が不十分ということで、こうした会社が自ら実態の解明に
あたっている。
日本企業は自社工場での製造が中心なので、フォクスコン事件の責任を追及される主要
ターゲットにはなっていないようだ。一方で自らの工場経営にとって、この事件は他人事
ではない。最低限の労働環境だけでなく、「働きやすさ」や「働きがい」を先進国と同じ
ように提供しなければならなくなるのだ。
中国リスクが大きくなったから、ではベトナムやインドに生産拠点を移転しよう・・・、
が解決策ではない。新興国の経済発展はプラス部分ばかりではない。このような陰の
社会問題をどう解決していくか、先進国と新興国両方での努力が必要になっている。
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