CSR倶楽部レポート

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   CSR倶楽部レポート 第74号    2010年4月27日
     「新興国市場が巻き起こす経営のダイナミズム」

     発行:(株)創コンサルティング
        海野 みづえ ( info@sotech.co.jp )

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日経が「NICES(ナイセス)」という企業評価ランキングを始めたというので、
見てみると・・。

「投資家」「消費者・取引先」「従業員」「社会」の4つの分野で評価するという
ことです。様々なステークホルダーへの対応をどれだけ進めているか、という
ランキング。これって要するにCSR評価じゃないですか。なのに、あえて「CSR」
といいたくないらしい。
続き>>http://www.sotech.co.jp/talk/vol55.html

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●新興国市場から生まれる
中国やインドの新興国市場が拡大しており、日本企業もこのマーケットにしのぎ
を削って参入している。成長地域がこうした国々にシフトしているので・・・、
と単純に経済指標でとらえる以上のダイナミズムが新興国を舞台に繰り広げられ
ている。混とんとしたこの市場で成功するために、経営のロジックや経済の
セオリーに地殻変動がおきている。

英エコノミスト誌が行った「新興国市場のイノベーション」特集(2010/4/17号
)に、最新のエッセンスが詰まっている。これまで私のレポートで何度かこの
分野の動きを途上国支援ビジネスとして取り上げたし、日本でも「BOPビジネス」
として認識されるようになってきた。しかし当地の現状はもっとシビアで、
これらと似て非なる「新興国ダイナミズムが生み出す経営のイノベーション」
が繰り広げられている。そのくらい私には衝撃的に感じられた。日本企業も現場
ではそのエネルギッシュな変化に直面・格闘しているだろうが、どうも日本本社
のトップにその臨場感が感じられない。ガッツーン!と自分の頭を殴ってもらい
たいのだが・・。

●BOPビジネスの枠から大きく発展
確かにこの分野はBOPビジネスから始まっている。原典プラハラード氏の
「ネクスト・マーケット」にはBOPの潜在力が詰まっている。これをお勉強する
ことはいいがこの本が出たのは2004年、この数年間で世界の状況は激変している。
BOPビジネスは新興国イノベーションの第1ステージだ。ここでは貧困解決やNGO
との連携といった社会性が強調されるところもあるので、ビジネスのダイナ
ミズムまで感じにくい。事例もユニリーバやダノンといったこの分野でおなじみ
の企業かローカルの中小企業だ。

この理論を企業経営の実践にあてはめ、新興国の主要企業が次々成果を出し
始めたのが第2ステージと私は考えている。タタやインフォシスといった急成長
している現地企業が目を引く。これを“グローバリティ”と名付けて紹介して
いるのが、ボストン・コンサルティング・グループの書(日本語タイトル
「新興国発超優良企業」)。この本は2008年に発行されており、金融危機以前の
実態だ。その時点で既に、「『未来のトヨタ』、『ネクストGoogle』は新興国で
生まれている!!」と書いている。新興国企業がたくましく、混沌とした市場
でビジネスをつくりあげている様子がわかる。

そして金融危機以後、新興国勢力が格段に強くなり、世界経済の牽引役になる。
そこでますますこのトレンドが猛威をふるう。これが現在の第3ステージ。
その地殻変動の実態を、今回の特集で分析している。

●「超低コスト生産」から生まれるイノベーション
もはや、「経済の底辺のために貧困を解決する事業をやりましょう・・」ではない。
これからのビジネスの舞台は新興国市場。そこでは劇的なビジネスモデルの
イノベーションが起こっている。さらにそれは先進国企業に波及しており、
それに適応できない企業は生き残れない・・。

新興国市場の厳しいニーズ、生産条件に勝ち残ることがイノベーションをもた
らす。この新興市場発のイノベーションがむしろ先進国にも大きな影響を与えて
いる、という逆方向のイノベーションを「リバース・イノベーション」と呼んで
いる。これはマネジメントのイノベーションなのであり、新興国企業だけでなく
先進国企業のビジネスモデルともなりつつあるという。

そこで、そのモデルとは?

ここでは”Frugal production(切り詰めた生産)”といっており、早い話が
「超低コスト生産」だ。しかしただ費用圧縮を達成しているのではない。大前提
として途上国で生産を可能にするために、生産方法を途上国の人材や資源で組み
立てるゼロからの構想だ。調達先も、確約された品質を追うよりもコスト重視で、
調達網のロケーションなどを含め根本的な生産革新に基づく。かつて日本企業が
得意とした「リーンプロダクション」の次に来るイノベーションと位置づけて
いる。

そして販売する製品も、先進国向け設計の廉価版を投入するのではなく、その国
の消費者のニーズや要求をもとにした現地オリジンの製品を開発。だから、
あれもこれもの多機能ではない。TaTa自動車のNanoを見て、「こんなクルマ・・」
と日本人はいうが、「それが現地消費者のほしがっている車なのだ」、と憂いも
せずに導入することなのだ。それが売れれば、そこは莫大なボリューム市場という
わけだ。技術への過度のプライドが先行する限り、このバリアはクリアできない。

そこまでしてやることないはない、日本企業は中所得以上の顧客層を狙えばいい
じゃないか、という声が聞こえてくる。ハイエンド戦略だけでいくかどうかは、
各社の意思だ。低価格の泥沼過当競争に入り込むのがいいのか、私もわからない。
ただ、新興市場が消費に目覚めたこの時期にブランド商品を投入しておかないと、
もう少し豊かになってから・・では勝負がついているかもしれない。新興国企業が
メキメキと力をつけており、日本企業の優位がこの先も続けられるのかも不確実
要素だ。

新興国イノベーションに成功している企業のケースもいくつか取り上げられている
が、先進国企業ではP&GやGEといった欧米企業ばかりだ。日本企業もやや遅れな
がら、最近このイノベーションに取り組んでいる企業は出てきていると思うが、
同誌は「リーンプロダクションの終わりとともに日本は終わった・・・」といい
たげだ。これにはトヨタのリコール問題も重ね合わせている。わずかにゴーン氏
についても取り上げられているものの、悲しいかなここでは彼は「ルノーの」
ゴーンだ。

日本企業のトップも、新興国イノベーションに見られる世界の変化に適応する
迅速さと柔軟さをもつこと、そしてその戦略を明示することが必要だ。それが
見えないので日本企業のプレゼンスがまるでない。社長を解任されたとかで内輪
もめを露呈させるなどと、みっともないことをしている暇はない。内向きすぎる
ニッポン、もっと外をみよ。


・・・とここまで書いたところで、プラハラード氏が4月16日に死去したという
ニュースに遭遇。まだ若い、69歳だ。ご冥福をお祈りいたします。

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