CSR倶楽部レポート

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   CSR倶楽部レポート 第68号    2009年10月9日
     「株主行動からエンゲージメントヘ: 社外取締役の経験から」

     発行:(株)創コンサルティング
        海野 みづえ ( info@sotech.co.jp )

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日本航空の経営再建問題。ここまでひどくなる前に対策ができなかったのか・・
誰もがそう思います。
同社をモデルにした小説「沈まぬ太陽」(山崎豊子著)では、腐敗した経営陣の
ことが書かれています。個人的には、日航に関心をもってというよりもアフリカ
を舞台にしたビジネス小説を読もうという軽い気持ちで読み始めたのですが・・。
続き>>http://www.sotech.co.jp/talk/vol43.html

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●株主の代表・・・としての社外
今回はコーポレート・ガバナンスのひとつの見方について、2年間の社外取締役の
経験から書いてみたい。

私がブラザー工業の取締役に就任したのは、スティールパートナーズ(SP)が
株主提案をしてきた2007年の株主総会だった。総会前からこのアクティビストの
動きが大きな話題になっていた時だ。40歳そこそこのアメリカ人投資家が日本に
来て、「日本の経営者を教育しに来た」などと言い放てば叩きたくなるし関心を
呼ぶ。同社の経営陣にも随分と緊張が走っていたようで、まだ何も関わって
いない就任前の私にもその感覚が伝わってきた。こちらも総会がどんな展開に
なるのか、心して臨まねばと引き締まったものだ。

そして、昨年秋の金融危機以降はファンドの力が大きく衰退。その後年末にSPは
ブラザー株を売却し撤退したため、ファンド対応はこれで終わった。私はその
翌年に退任したので、ちょうどこの2年間はライブに動いているファンド対応の
経緯をガバナンスの当事者として中から体験したことになる。

この間ブルドックソースやサッポロHD、アデランスと、SPから次々と動きがあった
ので、それらをつぶさに分析させてもらった。他社の取締役やガバナンス関係者
との交流も広げ、また弁護士や法務専門家の方々とはこの仕事を通して本格的に
向き合うことになった。

ブラザーに対しては表立った動きはあまりなかったが、水面下ではポツポツと
アプローチがある。ちまたのニュースだけでなくこうした動きも取締役会で報告
され、現状分析や今後の対応などまさに実践の渦中にいた。

そんな状況だったので、取締役としての役割や任務についての知識ばかりでなく、
ガバナンスのあり方や資本市場での株主と経営者の関係など、生きている経営学の
最先端を学ばなければならない。勉強会等に参加し、取締役の善管注意義務から
始まって各種諸先輩から学ばせていただいたが、ファンドによるTOBとその防衛と
いう事態は誰にとっても新しすぎて、(M&Aアドバイザー以外)ほとんど誰も切り
込んだアドバイスができない。

結局過去の日本的経営の成功体験の前例ではなく、今動いている経済のコン
テクストのなかで事態をよく把握して公正な分析力でもって独立の見解で判断して
いくしかない、ということにしばらくして気づく。そこで、完全独立で常に自分の
眼で観察・洞察してきた私の立場こそ、重要だと思えるようになる。

●株主だけでなくステークホルダー視点を
そんななか、株主と経営のいい関係について現状を整理しつつ、企業や資本市場に
とってのあり方をずっと考えている。アングロサクソン式ガバナンス論でいえば、
社外取締役は株主の代表としてその利害にもとづいて執行側を監督する役割だ。
つまり、
 1.会社を社外の立場からチェックする、
 2.株主の利害(=株主価値を上げる、つまり株価を上げること)から会社に
   プレッシャーをかける、
なのだが、これがどうしても納得できない。2.は特に財務パフォーマンスだけ
なのだ。株主資本主義では1.と2.は一致するのだろうが、ステークホルダー
重視の主張を支持する私には、2.は受け入れがたい。M&Aアドバイザーはそんな
ことは悩まなくていいので、スムーズにアドバイスできるだろうが。

日本のガバナンス論では、1.と2.を識別することの必要性を論ぜずに一体で
推進していないだろうか。社内役員のみの構成でなく社外の眼を経営に取り込むこと
には私も賛同するが、では株主の立場だけを尊重すればいいのか。短期的な財務
パフォーマンスだけですぐに売り抜けるかもしれない株主の方を向いて「あなた
たちは神様です」といった経営をすることは、企業の持続的な活力をそぐ。

では、どうしたらいいのか。そこでステークホルダー論を資本市場に取り入れよう
とするヨーロッパ発の動きがよく理解できてくる。
 1.会社と株主という二者の対峙概念に、ステークホルダーという第三の立場を
   持ち込む
 2.株主がアクティビズム(株主行動。特に株価上昇を狙って)でもっていわば
   収奪的に会社に圧力をかけるのではなく、エンゲージメントという形で企業
   の経営に協力し、ステークホルダーの利害も含めて長期的に株主価値を
   あげる努力をする

日本企業にとって、外部との関わりは株主行動よりもエンゲージメントのほうが
向いている。破綻を来たしたアングロサクソン式を今からまねるより、エンゲージ
メント型ガバナンスを進めていってはどうだろうか。

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