CSR倶楽部レポート

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   CSR倶楽部レポート 第61号    2009年3月16日
     「非財務情報の開示制度」

     発行:(株)創コンサルティング
        海野 みづえ ( info@sotech.co.jp )

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農業法人でのCSRシンポジウムに行ってきました。農業経営でもCSRをきちんと
意識しようということで、そのガイドラインを策定しているところです。
続き>>http://www.sotech.co.jp/talk/vol31.html

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●ヨーロッパで進む投資家と企業のダイアログ
ヨーロッパを中心に制度化が進む非財務情報の開示、日本でも検討が広がって
いる。私も開示は必要だと思うが、「国際的な流れなので、日本も」といった
単純な海外受け入れ策では実効性がないものになってしまう。

既に多くの企業がCSR報告書を発行しているが、これでは対象が多岐にわたり
すぎて報告内容を絞り込めない。利用方法もまちまちなので、制度化への合意が
大変に難しい。そこで、制度化するのはその中でも投資家向けの情報
(=非財務情報)にという流れができつつある。

ヨーロッパではEU指令のもとに各国法を定めることになっており、たとえば
イギリスでは上場企業に対してアニュアル・レポートに非財務情報を開示する
よう義務付けている。ただし、どんな情報をどのように記載するかは各社の
判断による。

一方これでは情報の利用側にとって使いにくく、欧州委員会がサポートして
非財務のパフォーマンスをどのように評価するかを、投資家と企業両者が
集まって議論するプロジェクトが進んでいる。
http://www.investorvalue.org/

そしてESG投資を推進する機関投資家のグループであるUNEP FIは、
サステナビリティ経営を推進する産業団体のWBCSDとワークショップを始めている。
いずれも最近の動きで、両者間でいかに考え方や取り組みのギャップがあるか
を見出し、評価のための項目やアプローチの整理をしているところだ。

弊社でも一昨年、この試みを行った(第53号「責任投資とCSRの新たな潮流」、
2008年7月3日)。このような両者が継続してダイアログをする場が必要なの
だが、日本では投資家側の関心が弱くてこれ以上発展させるのはちょっと難しく、
今のところペンディング状態だ。

●気候変動情報の開示
非財務情報のなかでも、より関心事の高い項目として、気候変動情報の開示が
先駆けて話題になっている。CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)
に始まり、海外での情報開示を要請する流れから日本でも開示義務について議論
されはじめた。制度化というとそれだけで利害をもったグループが動きだすが、
本来は何のために開示が必要で誰がどのように使うのか、そのためにどんな情報
が対象になるのかをまず議論すべきだ。

1月には会計士協会からも提言が出された。国際的な流れとはいっているが、
この提言内容には大きく以下の点で議論の余地が大いにある。

・「情報開示=有価証券報告書への記載」でいいのか
情報の利用対象を投資家としているので、開示の媒体を有価証券報告書として
いるが、そもそも国際的な開示基準の話をしているのに、日本だけの様式である
有価証券報告書の枠組みに押し込めることでいいのかというスタートだ。

海外ではアニュアル・レポートがこれにあたるが、各社の独自のメッセージや
報告の部分が多く、今後の事業戦略や計画をいかに投資家に知らせるかが
ポイントだ。日本の有価証券報告書は規定の項目にあてはめた、「形式」として
の情報だ。確かに投資家は有価証券報告書を使っているがそれは最低限の情報量
でしかなく、これだけではとても投資判断はできない。

気候変動のような新たなタイプの情報はまだ定式化までいかず、従来の規定様式
に押し込んでみたところで何もわからない。まず最初に、「企業がこの問題を
どう考え、どのように戦略のなかに位置づけているか」から始まるべきだが、
有価証券報告書ではそのような内容は求めない。事業戦略に結びついていない
情報ならば、あまり役に立たないのだ。

・投資家は将来志向
そもそも資本市場は将来志向(Forward-looking)がベースであり、投資家の
関心は将来に向かって生み出される事業への期待の総和としての企業価値である。
経営者がどのような戦略と事業計画のもとにこれが実行されているかに関心を
もち、資本市場でのプラスの投資循環にどう載せていけるか、一方で事業への
リスクは見落としていないかである。事業戦略があってはじめて各種パフォー
マンスデータが意味をもってくる。

ところが会計士の役割は終わったことを基準に従って検証することで、過去志向
(Backward-looking)だ。有価証券報告書はその凝縮であり、基本的に投資家の
姿勢とは相反する。制度化しても過去志向ベースならばあまり投資家のニーズは
満たされず、結局使えない情報で終わってしまうだろう。

たとえば研究開発費。今後の事業戦略の実現に向けてどの分野でどんなコンピ
テンシーを実現しようとするのか、そのためにはどこにどう投資していくのかが
重要だ。中期計画などの将来への姿勢が、研究開発評価の重要ポイントになる。
有価証券報告書程度だけでは何もわからないし、そもそも年に1回終わったこと
の開示ではあまり意味がない。

●日本の投資家はどのような情報開示を望むのか
さらに投資家向けの開示といっているのに、肝心の投資家からは何も意見が
出されていないことも問題だ。ヨーロッパでは、投資家からの開示要請は非常に
活発だ。上記のような投資家-企業ダイアログのなかで開示の検討が進展して
いるし、ガバナンスを推進する投資家ネットワークからも提言が出されている。
会計士は、情報開示を求める投資家やNGOとそれを受ける企業とが枠組みの議論を
牽引するなかで、テクニカルな専門家として貢献する位置づけが自然だ。

このまま進むと、情報の利用者が不在のまま制度を輸入して済ますことになって
しまう。企業側は当然制度化を反対するだろうが、各自の利害だけでなく持続
可能な社会に向けてそれぞれが何をすべきかをぶつけあうことが必要だ。

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