CSR倶楽部レポート

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

   CSR倶楽部レポート 第31号    2006年11月1日
   「グローバルCSR調達: 
     サプライチェーンマネジメントと企業の社会的責任」

     発行:(株)創コンサルティング
        海野 みづえ ( info@sotech.co.jp )

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

先日GRIの国際会議に参加してきました。ここでもっとも印象的だったのは、
アル・ゴアの講演でした。英語のスピーチを勉強している私にとって、話す内容
よりもスピーチの伝え方にとても興味をもっていたのです。ゴアのスピーチ、
とにかくSplendid!!まず一言話し出した瞬間に、声の質が違うんです。最初は
うまく興味をひく話で始め、中ほどでは最近の動きや彼が関わっている活動を
解説。講演の最後は、力強く「今こそ動く時だ」なんて感じで締めるんですね。
サステナビリティ報告はこれからますます必要で、GRIは重要な役割を果たす、
なんていうことも話してましたが、ずっと自分の言葉で話しているのにこのくだ
りだけは演台に目を落とし身体が止まっていたので、多分用意された原稿を読ん
でいたのでしょうね。

彼は今温暖化防止をうったえる映画をつくり、映画俳優でもあります。見た人
から「いやぁとってもアメリカンだよ。ははは」と聞きましたが、もうじき公開。
私も見に行かなくっちゃ、アル・ゴアを。

----------------------------------------------------------------

●サプライチェーンマネジメント(SCM)でのCSR配慮
海外で語られるCSRには、事業活動のグローバル化は切り離せない。さらにその
範囲は自社内の取り組みにとどまらず、サプライヤーを含めた間接的な関わり
まで責任を求められている。そんな認識から、今回CSR調達の本を出版すること
になった。
「グローバルCSR調達: サプライチェーンマネジメントと企業の社会的責任」
日科技連出版社発行

本書はブラッセルで日本産業界のロビイストとして活躍してきた藤井敏彦さん
(経済産業省)との共同編著で、このほかソニーやNECの企業関係者そしてコン
サルタントやNGOの方など10人ほどの執筆陣で書き上げたものだ。
第1章 調達とCSR
第2章 CSR調達の国際規格およびイニシアティブ
第3章 CSR調達を実践する企業事例
第4章 原材料調達におけるサプライチェーンマネジメント
第5章 CSRサプライチェーンマネジメントの導入、実行
第6章 サプライヤー、調達企業の悩みどころと対応方法
第7章 グローバル経営とCSRサプライチェーンマネジメントの将来

本を書くにあたってこの分野の文献をインターネットで調べてみると、あらた
めてこの分野の文献が世界にあふれていることを実感した。労働者への現場聞き
取り調査などNGOがつぶさに行っており、これらを読んでいくだけでかなりの
実態がわかる。すべて英語なので日本に紹介されていないが、これだけ公表され
ている実状について日本企業が疎いことは本当に問題だと思った。

●グローバリゼーションの進展とCSR
CSRが世界に広まった要因は、1)経済のグローバリゼーションに伴う、途上国
での「負」の問題顕在化、2)企業を取り巻くステークホルダーの多様化、
3)企業不祥事の世界的レベルでの頻発、4)インターネットの進展やマスコミ
報道の増加、などがあげられる。グローバリゼーションの進展のなかに、日本的
なCSR観を超えたグローバルなCSR観がみえてくる。

グローバル市場では、SCMにおいてCSR調達を行わないことはリスクになり始めて
いる。しかもこれまでの事業活動では考えられなかったようなリスクだ。注意
していると、欧米の企業から「操業のための免許」(License to operate)という
言葉がよく聞かれる。事業をするうえで最低限やっておかなければならない
ビジネス上の要件として、特に途上国の操業の場で語られている。

欧米のアパレル会社は、既にNGOなどから強いバッシングを受けて10年間の
CSR調達の経験を積んでいる。本書ではリーバイスなど先進欧米企業の例と、
最近CSR調達に取り組みだした日本企業の経験を紹介している。

具体的に何を行うのかとなると、この分野の規格に従ってマネジメントを構築し、
それを第三者に監査してもらわないといけないのでは、と思う人も多いだろう。
しかしCSR調達を進めるうえでまず行うべきことは、この要求分野についてサプ
ライヤーの実態がどうなっているかを再確認することだ。第三者によるチェック
よりも、まず自社内のチームでサプライヤーをチェックする二者監査の方が
有効だ。そのために、サプライヤーに対する行動規範を自社でつくり、それに
基づいてモニターしていく。第三者監査が必要となれば、社内でひととおり展開
したあとに依頼すればいい。

●サプライヤーの実態をどうとらえるか
私たちが一番気になるのは、例えば中国の労働現場で労働時間などの違反が
見つかった時、企業はどう対応するのだろう、という疑問だ。違反が見つ
かったら、サプライヤーとの契約を打ち切るのか、または問題改善のために
どうやって指導していくのか。実態を改善するには、相当な労力がかかること
は想像できる。「第6章サプライヤー、調達企業の悩みどころと対応方法」
ではその実状を解説している。

結局のところ、この問題についての明確な対応方法はないといっていい。先行
するアパレル業界では、監査に依存するマネジメントには限界があるため、最近は
Capacity Buildingつまりサプライヤーの能力向上の支援に軸を置いている。

「1991年に契約条件を策定して監査を始めた当初は、監査員はさながら「警察」
のような存在だった。しかし、その後は「警察」による取り締まりからエンゲー
ジメント(参加)へと進化させようとしている。ビジネス・パートナーが自分で
自分を律することができるような方法にしたいと考えている。「警察」による
取り締まりのような形で監査をしていると、ビジネス・パートナーは仕事を続け
たいがために、問題を隠そうとする事態を招く。しかし、それは問題を解決しな
いばかりか、見えなくしてしまい、より状況は悪くなってしまう。むしろ、問題
があれば、それをビジネス・パートナーが自ら解決することを支援するような
やり方をとった方が、より持続可能だと考えるに至ったのである。」
(第3章リーバイ・ストラウス社の事例より)

CSRサプライチェーンマネジメントは、調達の条件にあらたに労働慣行を加える
ということではなく、パフォーマンスの向上をサプライヤーと企業がともに取り
組む行為である。調達する企業側がQCD(品質、コスト、納期)を押し付けて
おきながら、一方で労働管理に配慮などと矛盾する行為では広がらない。社内の
「とにかく稼ぐ」ロジックとのぶつかり合いでもあり、そう簡単に実践できる
ものではない。

●グローバルな人材戦略展開の必要性
グローバルのCSRに向き合ってみて、CSRはヒトの問題なのだとつくづく思う。
対策の鍵は体制づくりよりも人事労務の状況を改善することであり、社会や
地域のニーズを社内の職場に反映させ、社員や労働者が働きやすい環境を提供
することである。実際には、人事機能が社内権威となっており内向きの傾向が
強いようだ。私が知る限り、多くの日本企業では本社人事が対象とする範囲は
国内人事のみであり、海外の実態を把握する機能が抜けている。

各地域、各国レベルでの経営の現地化が部分最適だとすれば、このうえに各国
の部分をつないだグローバルな全体最適戦略が必要になっている。CSR調達は
操業する地域で信頼を得るための事業活動ともいえる。その地域のステーク
ホルダーとの接点となる社員の判断と、本社が全体を一括して把握するグロー
バル体制があってはじめて成果がもたらされる。

※本書を10冊以上ご購入いただくご希望がありましたら、著者割引(2割引)で
ご利用いただけます。ご希望の方は、info@sotech.co.jpまでご連絡ください。

==================================
ご意見、お問い合わせは、下記までよろしくお願いします。
発行:  海野 みづえ ( info@sotech.co.jp )
株式会社 創コンサルティング (http://www.sotech.co.jp)
〒102-0076 東京都千代田区五番町2-10 さくら五番町ビル2階
※掲載内容の無断複製・転載はご遠慮ください。
※このメールマガジンは、まぐまぐで配信しています。
※無料講読の登録・変更・停止、バックナンバーはこちらまで。
   http://www.sotech.co.jp/csrreport/
==================================

第30号CSR倶楽部レポート一覧へ第32号