サステナビリティ倶楽部レポート

第11号「TPP是か非か」

2011年12月1日

●TPPに臨むアメリカのアジア戦略

APEC開催中はTPPに参加するか否かの議論が賑わっていたが、閉幕するとその論議も冷え込んでしまった。もちろん問題が解決したわけではないのだが。

反対派の主流は農業関係者で、安い農産物が日本に入ってきて日本の農業が壊滅するという主張。賛成派は主に産業関係で、この経済協議に日本も早い時期から参加して日本の主張を反映すべきというスタンスだ。

TPPはアジア太平洋地域の協定だが、実際のところ最大の経済力と政治力をもつアメリカの影響下ですすむ構造だ。それならば、賛成か反対かを語る前にアメリカがこの先どんな方針なのかを知っておくことが重要になる。これには、ヒラリー・クリントンが10月に今後のアメリカの外交戦略について発表した論文”America’s Pacific Century”を読んでみるといい。

http://www.foreignpolicy.com/articles/2011/10/11/americas_pacific_century

アメリカはアフガニスタンから撤退し、今後はアジアを重視した外交戦略をとるという。APECでオバマ大統領がアジア重視を説いたが、その根本がこれだ。

ところで、私は英語のメディアを読むことで世界がわかるといっているが、米英メディアには彼らのプロパガンダが多く(そもそもメディアというものは、政府の意図を伝える手段なのだ)、これらが公正な情勢を伝えているというわけでもない。信頼おけるメディアではあっても、信用するかどうかには自己判断が必要なのだ。このバイアスに気づくには、人民日報でも読んだ方がいいのかもしれないが(??)、まぁともかくバイアス承知の疑いの目で、書かれたことからわかる事実とそこに込められた真意を自分で考えるように心がけている。

●アメリカ雇用回復のため

では、アジア重視戦略とはどんなものか。アメリカにとってアジアとは、米企業の新市場を切り拓く機会であり、貿易投資を促進しアメリカ経済の活性化をはかる場なのだ。これによってアメリカの雇用が創出できる。特に雇用創出のことは、何度も触れられている。

アメリカの国務長官なのだから自国の利益を考えた戦略は当然なのだが、アジアをアメリカのために開放することがAsia-Pacific地域の安定なのだとはっきりいうことに違和感を感じる。そして協定はRule-basedの体制でと。アメリカが進めたいAsia-Pacific戦略とは、アジア人の平和や経済発展ではなく、アメリカ企業の繁栄とアメリカ人の雇用を確保するためのルールづくりなのか、とわかってくる。

その例として、韓国とのFTAにも触れている。FTAによって、アメリカからの韓国への輸出の95%の関税が撤廃される。これで100億ドルの輸出と7万人のアメリカの雇用増が期待できる、といっている。韓国も6%経済成長が達成できるからいいではないか、という。

しかし・・・。韓国経済が成長しても、それはすべてアメリカの懐に入るのだ。そうなれば韓国の企業活動が縮小して、韓国人の失業が増えるだろう。そんなこと、クリントンはお構いなし。数字の上で国が栄えても、国民はやせ細る。株価という経済指標を維持するために従業員を大量解雇して、町に失業者があふれているのに経済が回復したといっている現状に猛反対され、それなら失業を外に追い出そうということらしい。

同じように日本にも輸出を増やし、ここを獲得したいのだろう。日本に限ってそんなことは起こらないといえるのだろうか。農産物ばかりでなく、工業製品でも日本製が浸食されていく。今やどの国も極度の保護主義、国粋主義になっており、輸出促進のために自国の通貨を安く抑えたい。日銀がいくら介入したところで、世界のどの国も協調にのってくれないから円高に戻る。そんななかで、日本製品が自国のことしか考えない外国製品と対抗できるのか。今は理想主義からは遠いサバイバルの現状だということを考えないといけない。

●アメリカは強いリーダー?

アメリカが強気なのは、アジア諸国が中国の脅威にさらされ、板挟みになっているところにある。ヒラリー・クリントンはそれがわかっているから、あえて So there should be no doubt that America has the capacity to secure and sustain  our global leadership in this century as we did in the last.(アメリカが20世紀に やってきたように、今世紀も世界のリーダーシップを保障し維持するキャパシティがある ことは疑いないのだ。)と言い放って、アメリカは引き続き威力を持ち続けるのだと誇示している。

しかし、今のアメリカは頼れるリーダーなのか?今やユーロが崩壊寸前で、ヨーロッパの恐慌が現実化しそうだ。ではアメリカが安泰なのかといえば、ドルの方が先に崩壊するといわれるくらい財政も金融も末期的であり、既に凋落した大国でもう力がない。強気の主張をすればするほど、その狡猾さと詭弁のプロパガンダが透けてみえてくる。そういった国に従っていていいのだろうか?

●こんな情勢だから、やっぱりサステナビリティ

これだけみてくると、TPP反対説が有望になる。では参加しない方がいいのか?実のところ私にはどちらがいいのかよくわからない。参加せずに日本がやっていけるか。これは、どの大国からも距離を置き、半ば鎖国状態という選択になりそうだ。いっそそこまで行き着いてしまい、自然を保全する農法や地産地消を目指す方が、長期にサステナブルな経済の仕組みといえるのかもしれない・・・。

TPPの議論から始まり、やはりサステナブルな社会をつくることに行き着く。割り切ってそういう生活ができればいいのだが、ワタシのなかの理想型と現状のギャップがまだ続いている。納得いく答えが出るまで、まだかかりそうだ。