サステナビリティ倶楽部レポート

[第72号] 会社視点のCSRから社会視点のサステナビリティへ

2017年06月12日

 

●会社の視点から社会の視点へ
最近社内の担当名称をCSRからサステナビリティに変更する企業が増えてきた。この分野をリードする企業らが率先しているので、この流れは進んでいくだろう。

両者の定義と関係については、ISO26000に明記されている。
「持続可能な発展とは、地球の生態的制限の範囲内で生活し、未来の世代の人々が自らのニーズを満たす能力を危険にさらすことなく、社会のニーズを満たすことである。持続可能な発展には、経済、社会及び環境という三つの側面があり、これらは相互に依存している。・・・社会的責任は、組織に焦点を合わせたもので、社会及び環境に対する組織の責任に関わるものである。社会的責任は、持続可能な発展と密接に結びついている。・・・」

社会全体のサステナビリティを実現するために、企業が果たす責任がCSRなのだ。
このことをよく認識せず社内で進めることばかり目がいってしまうと、コンプライアンスの延長である社内管理としてしかとらえられなくなる。実務担当者が陥りがちなケースであり、残念ながらこれが多いのが実状だ。

ファーストリテイリングの柳井社長は、
 「CSRといったら、会社の視点でしょう。サステナビリティーは、社会の視点ですから」 (日経ビジネス2017年3月1日付「もう隠しません。ユニクロが工場リスト公開」 )
といって、昨年11月に「CSR部」を「サステナビリティ部」に改組した。さらに担当役員は以下のように答えている。
「ビジネス戦略上の重要性から、これまでは工場のリストは開示してこなかった。品質管理などの生産ノウハウを競合他社に知られないよう、情報を守りたかったからだ。しかし、もはや自分たちの戦略上の重要性ばかりを言っていても仕方がない時代になった」

社会の立場にたってステークホルダーに向けて説明していくことが事業展開のために必要だ、ということを会社のトップがようやく理解し、これを「サステナビリティ」として説明する。私はもう6年前からこのメールレポートを「サステナビリティ倶楽部」と名づけて発信しているが。

長いカタカナで馴染みにくく、持続可能性と日本語に訳してみてももっとわかりづらくて世に広がるには随分時間がかかったが、SDGsの推進が後押ししていることもあるだろう。また投資家がESG投資を積極化していることも追い風だ。彼らに説明するうえでも社内管理指向のCSRでは説明しきれず限界があり、事業戦略との関連や対外的な視点を盛り込むアプローチが必要となる。

●CSRよりも「責任ある企業行動」を要請
一方で企業活動に責任を迫る動きは顕著で、こちらはCSRではなくResponsible Business Conduct(RBC: 責任ある企業行動)と呼ばれ出している。RBCはOECD多国籍行動指針に基づくもので、社会面での行動指針だけでなく、競争や納税といった経済活動の基盤にあたる項目も盛り込まれている。

海外では政府がコミットしているOECD指針の方が重視されており、日本で着目されているISO26000はあまり表に出てこない。OECDにはガイドラインに違反するような問題が起こった場合、国ごとに申し立てを受け付ける窓口をもつというNCP(National Contact Point)制度があわせて定められているため、指針の実効性がもたれる。さらにコミュニティに関連する項目は含まれていないので、社会貢献活動は除外した責任色が濃い枠組みになっているのだ。

●一方で、経営の継続性の意味でも・・
・・・と、サステナビリティが主流になっている説明をしてきたが、海外でも「社会の持続可能性」として理解しているのは、環境・社会の分野が中心なので気をつけないといけない。経営実務全般では「経営の継続性」という意味で使われる方が多い。先日イギリスの投資家(ESGではなくメインストリーム投資家)の講演を聞いた際には、彼女は事業の継続性についてFinancial sustainabilityという言葉で説明していた。またある事業会社で経営幹部向けに講演した時には、参加者から「サステナビリティとは経営の継続性という意味だと聞いていましたが・・・」との質問を受けた。

用語の使い方を注意してみていくと、それを巡る背景や考え方がわかってくる。逆に自分のなかでよく理解していない言葉を安易に使ってしまうと、外部から誤解を生み噛み合わない展開になる。
部署名は社内外に会社の意図を示すものだ。会社都合だけの機能にならないよう世界の潮流をよくみて、変化に適応していく姿勢を込めてほしい。

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