企業の社会的責任(CSR)とは

「会社は利潤の追求だけでなくもっと社会に向いた経営をすべきである」といった、企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)を求める動きが広がっています。こうした要請は今に始まったことではありませんが、最近のCSR論は、ステークホルダーに配慮した企業活動を行いさらにアカウンタビリティ(説明責任)を果たすべき、という欧米発のうねりが影響してきているところが特徴です。ステークホルダーには、顧客、株主、従業員のほか、取引先、地域住民、求職者、投資家、金融機関、政府など、多くの主体が含まれます。

欧米では、1990年代から国際的なNGOや消費者団体が「途上国の安い労働力を酷使したビジネスモデル」などを問題視し、企業に対応を迫ってきました。会社側にとってはこれが無視できないほどの圧力となり、CSRとして対策するようになったのです。2000年に入って国際的な枠組みを検討する動きが広がり、そこでこの流れが日本にも波及してきました。

一方日本ではこの時期不祥事が多発し、コンプライアンスの徹底やコーポレート・ガバナンスを再考する動きが国内で起こっています。このため、CSRとはすなわちコンプライアンスであるという見方もしばしばありますが、ガバナンスとは社内をどう統制するかの体制論であり、両者を区別して考えることが必要です。

では、本来のCSRとは一体どのような活動を指すのでしょうか。おそらく、日本企業の経営理念には、必ずと言っていいほど事業を通じて社会に貢献するといった趣旨の文言が盛り込まれていることでしょう。このことからもわかるように、CSRとは自社の経営理念をもう一度見直して、社会とのつながりを考えながら事業に取り組むことであると解釈することができます。

ステークホルダーに対するマイナスの影響を減らしながら、プラスの効果を増やしていく。顧客に対しては安全と品質の保証された商品・サービスを提供し、従業員に対しては働きやすい職場環境づくりにつとめるように、株主や地域社会、取引先、環境といった各ステークホルダーへの配慮を事業のあらゆる活動に組み込むことがCSRの基本といえます。

CSRに取り組む上でまず留意すべきは、CSRをコストととらえることなく、将来に向けた投資であるという視点を持つことです。たとえば、日本の消費者は欧米のように声を大にして積極的に不買運動をする動きが少ないですが、企業に信頼がなければ暗黙のうちに商品やサービスから離れていくという傾向があります。気がついたら誰も買わなくなっていたという事態に陥らないためにも、企業の側から積極的にCSRを意識する姿勢は大切なことです。