資源輸入国の日本において、リサイクル資源の活用は喫緊の課題だ。帝人ではBtoB企業の枠を超えて、アパレル、流通、ユーザーまで巻き込んだ繊維リサイクルを展開している。
帝人では1992年に「帝人グループ地球環境憲章」を制定し、事業を通じてさまざまな環境保全活動を行ってきた。なかでも主力製品の一つであるポリエステルのリサイクルには、素材メーカーの責任として積極的に取り組んでいる。
ポリエステルは、繊維をはじめ、PETボトル、フィルムなどに使われている、生活になくてはならない素材の一つだ。原料が石油なだけに、資源の枯渇、CO2排出、廃棄など、環境問題への対応が課題となっている。原料調達やコスト削減といった経営の中核課題でもある。
同社では、2002年に回収システム「エコサークル」をポリエステルの循環型に発展させた。帝人ファイバーが開発した世界初のリサイクル技術を核として、回収→再生→生産→販売→購入→回収を循環させる仕組みだ。
http://www.teijin.co.jp/eco/eco10.html
リサイクル技術は品質劣化がなく何度でもリサイクルでき、生産から廃棄に至るまでのエネルギー消費量、CO2排出量を大幅に削減することが可能だ。しかし当初は、回収に関する法規制や、費用負担などがネックとなり容易には拡大しなかった。素材メーカーだけで循環は成り立たないため、回収者、生産者、購入者の協力も欠かせない。
転機は2007年に実施した環境の専門家やNPOなどとのステークホルダーダイアログである。このとき「素材メーカーでもBtoB(事業者向け)だけでなくBtoC(消費者向け)も意識した事業展開が必要」などの有用なアドバイスを得て、流通大手との連携、業界全体の巻き込み、行政への働きかけなどの施策を実施していく。(ダイアログの内容は同社2007年CSR報告書に掲載。→報告書ダウンロード)
アウトドア製品パタゴニア社と連携して海外への展開も既に着手していたが、百貨店やファッションアパレルとの取り組みの拡大、アーティストとのコラボレーションなど、一般消費者への働きかけを強化。「エコサークル」の輪は徐々に広がりつつある。
今後の課題は、同業他社やNPO・自治体との協業など、従来の枠を超えた社会的なリサイクルをさらに広げるためのムーブメント作りだ。消費者のリサイクル意識が高まれば、リサイクル可能な商品の流通が拡大し、結果的に素材メーカーのメリットとして返ってくる。
*親しみやすいイラストが特徴の「エコサークル」ホームページ(http://www.ecocircle.jp/)では、参加要領がダウンロードできる。
社会の課題は広範囲にまたがり、1社だけの努力では対応できないことが多い。ここで重要となるのが関係者を巻き込み、パートナーとしてともに課題解決に取り組むことだ。帝人の事例はBtoB企業でありながら、自ら主導して循環の輪を構築した点に特徴がある。
事例でみたように他者を巻き込むことは決して容易ではない。社会的な課題の解決という大きな目的を共有し、なぜそれが必要なのか、どうすれば実現できるのか、そのために関係者がそれぞれ何を担うのか、など周到な準備と展開戦略が不可欠となる。
同社の取り組みが有効に回転しだした最大の要因は、やはり最終消費者まで巻き込んだことだろう。消費者はBtoB企業ではなかなか見えにくい存在だが、バリューチェーン全体でCSRを捉えると、非常に重要なステークホルダーになる。
消費者は単にエコだけでは買ってくれない。ファッション性や機能性などを満足し、かつ、適正な価格であることも要件だ。これはもはや素材メーカーの範疇ではないが、ここでステークホルダーダイアログが活きてくる。ゴミ問題のNPOがポリエステル製品の廃棄問題を啓発する、グリーン購入推進団体が会員企業に使用を促す、アパレル企業が「エコはかっこいい」をファッションにするなど、様々な連携が生まれてくる。
さらに展開が進めばエンゲージメント関係に発展する。ビジネスでは競争関係にある同業他社とも、CSR課題によっては協創関係となることを期待したい。
ゴミは極力出さないように努めているが、身の回りを見回すとリサイクル可能なモノが数限りなくある。もう着ない(着れない?)学生時代の衣類や、初めて買ったマックPCなどは実に捨てがたい。
日本がリサイクル資源大国になるには、従来ゴミとして廃棄されていたモノだけでなく、家庭や会社で眠っている資源も有効に活用したいものだ。(鷹野秀征)