パナソニック電工 成長戦略としてのダイバーシティ(人材の多様性)

■ 背景

女性の活躍推進は日本企業における経営課題の一つだ。取り組みは徐々に進みつつあるものの、実態が伴うにはまだまだ時間がかかる。欧米のグローバル企業のように、性別はもちろんのこと、国籍、人種、宗教等の人材の多様性を市場の反映として捉え、多様化した価値観に対応する商品・サービスの提供を実践している例はまだ多くない。

■ 取組み内容と進め方

パナソニック電工では、2004年に女性躍進推進室を発足。2005年には社長直轄組織として女性躍進推進活動を本格化した。社長の強力なコミットメントのもと、「女性躍進月間」の設置、「次世代認定マーク(くるみん)」取得などへ展開していく。その後、2008年から女性に加えて「外国人」「障がい者」を3本柱とするダイバーシティ推進室へと発展。異なった視点を商品開発や事業展開に取り入れること、お客様へのソリューション提供強化につなげることを目指している。

同社の取り組みの原点は、創業以来の伝統である「ものを作る前に人をつくる」「衆知経営」という理念だ。さまざまな人の知恵を集めて経営を進めていくべきという考え方が、ダイバーシティを推進する上で後押しとなっている。経営層によるダイバーシティ・アドバイザリー・コミッティを設置しているのも本気さの現われだ。

営業所、ショウルーム、工場などへの全国展開は地区ダイバーシティ推進委員会が担っている。ダイバーシティブックレットを配布し、取り組む意義をしっかり現場に伝えるとともに、ボトムアップの活動を促進している。立上げ当初はなかなか進まなかったようだが、いまでは活発に意見交換したり水平展開したりと意識改革につながってきたという。

地道な意識・風土の変革活動と併行して、仕事のあり方の見直しを行っている点が特徴だ。「シゴトダイエット」と銘打った取り組みで、シゴトの質・量を見直し、多様な働き方を推進している。

こうしたダイバーシティ実現のための姿勢と着実な取り組みが評価され、2009年にJ-Winアワード準大賞(NPO法人J-Win主催)、続いて第2回東洋経済ダイバーシティ経営大賞を受賞した。

■ ポイントの解説

ダイバーシティは人材の育成であると同時に企業カルチャーを変革する長い道のりだ。好不況の波によらず継続が何よりも大事となる。パナソニック電工の例は目的がはっきりしていて、取り組みが堅実な点が特徴として挙げられる。それゆえ業績による影響を受けにくい。

社長が強くコミットしている理由は、ダイバーシティを「成長に向けた企業戦略」として捉えているからだ。

一般的にダイバーシティは社会的弱者(マイノリティ)の雇用という社会貢献的側面から始まり、CSR調査等においても障がい者雇用率や女性管理職比率の数値が求められてきた。しかし、数値を追っても中身が伴わなければ企業競争力にはつながらない。
同社においては、主要事業である住宅設備において決定権を持つのが女性であること、福祉・介護事業を持つこと、グローバル展開に外国人の視点が欠かせないこと等から、企業の成長に直結する取り組みになり得ている。

目的がはっきりすれば取り組み方も変わってくる。仕事のあり方の見直しはダイバーシティ促進のためだけではないが、多様な価値観を認め合う活き活きした職場にするための基盤として不可欠だ。これがセットになってはじめて現場も本気で取り組める。

今後の課題は管理職に求められる役割が増すことだろう。メンバーの多様な意見を引き出し、合意形成し、課題を解決しなければならない。これまでのように一律の管理ができない。周囲に合わせ調和を重んじてきた保守的なカルチャーを大きく変える必要がある。

日本人が苦手な「意見のぶつかり合い」をどこまで現場で進めていけるのか。グローバルで競争力を高めるために避けては通れない壁であり、変革には欠かせない要素である。

 

CSRスタディでスウェーデンを訪れた際、日本人会副会長にお会いした。ストックホルム市職員として都市計画に関わってきた元気の塊のような女性だ。40年前に日本の大手建設会社に見切りをつけたという。結婚退職しか道がなかったからだ。今では日本も変わってきたが、彼女の目からは「40年経っても変わっていない」「日本の国家的損失は甚大だ」と映る。これを逆に伸びる余地が大きいと前向きに捉えてダイバーシティを促進したいものだ。(鷹野秀征)

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